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東京高等裁判所 昭和55年(ラ)219号 決定

抗告人 株式会社いとよし

右代表者代表取締役 峯田好一

主文

本件抗告を却下する。

理由

本件抗告の趣旨は「原決定を取り消す、本件競落を許さない、との裁判を求める。」というのであり、その理由は、「本件競売物件は、抗告人が昭和五二年六月一日所有者たる株式会社静農から、賃料月額三〇万円、期間三年の約で賃借して引渡しを受けたのであるが、本件競売期日の公告は、右賃貸借についての掲載を欠くから違法であり、これに基づく本件競落は許されない。」というにある。

しかしながら、競売の利害関係人であっても、競落許可決定に対して抗告を申し立てることができるのは、当該決定により損失を被る場合に限られる(競売法三二条、民訴法六八〇条)ところ、抗告人がその主張のとおり本件競売物件を賃借して引渡しを受けたとすれば、たとえ、本件競売期日の公告が右賃貸借の掲載を欠くものであっても、抗告人は、その有する賃借権をもって競落人に対抗することができるのであるから、本件競落許可決定によってなんら損害を被ることはない。そうだとすると、抗告人は本件競落許可決定に対する抗告権がないというべきであり、本件抗告は不適法というほかない。

よって、本件抗告を却下することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 新田圭一 真榮田哲)

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